いつも、妊活の話をメインにお話しているコラムですが、今日はいつか妊娠したいと思っている女性にも、お母さんになったばかりの方にも知っておいて頂きたいお話をさせて頂きますね。
実は妊娠し、出産してからだと、意外にも子育てについて学ぶ時間は中々ありません。“育児は育自”(=子どもを育てながら自分も成長していくこと)とも言うぐらいで、子育てをしながら親も学んでいく事がほとんどです。
それでも、やはり、赤ちゃんの命に関わることだけは、出産前にしっかりと学んでおく必要があります。ネイリストさんの中で産休中や育休中の方はもちろん、お子様連れの接客がある場合など、万が一の間違いを起こさないためにも一度しっかり目を通してみてください。
先日ニュースを賑わした、「乳児ボツリヌス症」をご存知ですか?
生後6か月の乳児がはちみつを定期的に摂取していたことで、この「乳児ボツリヌス症」に感染し、亡くなってしまうという悲しい事故が起きてしまったのです。
知らない方のために少しだけ説明させていただきます。
1歳未満の乳児は腸内から「ボツリヌス菌」(※後ほどしっかり説明させて頂きます)を、うまく排泄出来ない為、ボツリヌス菌を含む食品の摂取は禁止されています。その代表例が「はちみつ」。もちろんこの危険性含め、現在では母子手帳発行時や産後の健診や離乳食教室でも伝えられています。
ボツリヌス菌って何?
少し専門的なお話をさせていただくと、この菌は土壌や水の中などに広く分布する、どこにでもいる微生物です。この微生物は非常に強い毒素を持ち、大人でもこの菌の食中毒に感染すると重症化するリスクがあります。ただしこの菌は酸素がある環境を嫌う為、通常の環境では増殖しにくいのも特徴の一つ。
この菌は非常に熱に強く通常の加熱では死滅せず、「芽胞」という休眠状態になります。『芽胞』という状態で死ぬことなく、また発育、増菌しやすい環境になるのを狙って待っているのでまた怖いんですね。
なぜ1歳未満の子どもだけがダメなのか?
そして、このボツリヌス菌が増殖した時に発生した毒素によって発生する症状は、『ボツリヌス食中毒』と乳児に発生する『乳児ボツリヌス症』にわけられます。
通常「芽胞」の状態で摂取しても、大人には特に症状が出ずに排泄されてしまいます。
その為、大人の食中毒感染の報告はさほど多くありません。
しかし乳児の場合は腸内細菌のバランスが未熟な為、芽胞状態のボツリヌス菌を摂取すると腸内で芽胞から、通常の増殖期の状態に菌が変わり、腸内でボツリヌス菌が増殖をはじめます。その結果大量の毒素を腸内で産生してしまい、乳児ボツリヌス症を発症する結果となってしまうんです。
はちみつ以外に気を付ける食品は
そもそもこの乳児ボツリヌス症が知られるようになったのは1986年、千葉県でボツリヌス菌に感染した乳児の症例が報告されたのがきっかけです。その時の原因食品がはちみつだった為、その後はちみつを1歳未満の子どもには与えてはいけないと注意喚起されるようになりました。
また、先ほどお伝えしたように、ボツリヌス菌は土壌に広く分布される微生物です。その為、はちみつ以外にも気を付けるべき食品があります。
・はちみつ
・黒糖
・土が多くついた食品 (レンコンやゴボウ)
・自家製の野菜スープを真空保存した場合
市販の離乳食用の食品類はボツリヌス菌死滅の為に必要な加熱処理がされていますが、非加熱と記載されているものは1歳未満の子どもには与えないように注意が必要です。
また、自宅で調理する際は泥をきちんと落とす事、1歳未満の場合は皮などはきちんとむいて泥汚れを取り除いて調理してあげることも大切です。特に泥汚れがとりにくいレンコンやゴボウは取扱いに注意が必要です。また、皮のまま調理する重ね煮なども1歳未満の子どもに与えるのはボツリヌス菌の観点からあまりお勧めできません。
ボツリヌス菌は例え沸騰させても家庭での調理で死滅させることは難しいです。
何となく大人のイメージでは「ハチミツは体にいい」「泥付きの食材は新鮮」という先入観もありますよね。だからこそ、大人ではなんともない、むしろ体にいいと言われている食品が乳児の場合は命取りになる可能性があることを知って頂ければと思います。
出産後というのは、特に新しく見聞きすることがいっぱいで、「今必要な知識」以外は抜け落ちてしまうこともあるのも事実。でも、だからこそ特に事前知識としてしっかりと頭に残しておいて欲しいのです。
また、昔はあまり知られていなかったことですから、面倒をみてもらう祖父母の方などもいらっしゃる場合は、しっかりと注意事項として申し送りの必要があることも含めて気に留めておきましょう。