とあるネイリストのつぶやき~ママとなり、ネイリスト歴をつなぐ現在~

ネイリストさんの中で、“ママになっても独身でバリバリのときと同様に続けられている”という方の割合は、業界全体を見渡してもまだ少ないのが現状かと思います。その理由としては様々挙げられると思いますが、会社の体制云々はもちろんのこと、現場の理解も大事でしょうし、独立していたらなおさら、一人責任を負いながらやりくりすることも含めて預け先含めた問題や、主婦業ママ業との両立問題も立ちはだかります。
それでも、「ネイリストになってよかった!」そうお話いただいたのは今年4歳になる幼稚園のママで、元々バリバリとネイルサロンで店長を勤めていたAさん。少しお話を聞いてみました。

ネイリストとしてバリキャリだった現役時代から妊娠発覚からの変化。

簡単に今までの経歴をお聞かせください。

Aさん:専門学校を卒業し、8年間の間に2つの会社で働きました。1つめは地元の大手美容院併設のネイルサロンでしたが、やはり都会に出てトライしてみたくなり、とあるネイルサロンに就職。結果的に店長も2年ほど経験させていただきました。今の主人と結婚してからも続けていたのですが、妊娠と同時に、あまりにもつわりがひどく、やむなく辞めて現在までは復帰していません。

産休・育休などは利用されなかったんですか?

Aさん:そういう選択もあったんですが、実は、当時の会社も形式上の仕組み自体はあったものの、実際に利用したことがある人がいなかったんです。当時、私は店長としてスタッフ研修も行っていたんですが、妊娠してすぐにもう電車もダメ、サロンのアクリルのにおいはもっとダメと、本当につわりがひどくて。若い子も多い中、妊娠の事実よりも、「つわりで気持ちが悪いこと」そのものに対する理解もなかなか得られず「なんで朝の研修ができないのか?」「急に遅刻するようになった」「気合で何とかなるもんじゃないのか?」(これは空気的に感じているものではありました)そんな雰囲気も漂い始めてしまったんです。結局、お店にも迷惑をかけたくもなかったので、いったん辞める選択をしました。

それに関してはすんなりと?

Aさん:正直、私はかなりバリバリとネイリストとして邁進してきていたので、やはり悔しい気持ちが先に立ちましたよ。店長になり、売上げも右肩上がりに成長させてきた自負もありましたし、後輩も育ってきている感触もあり。逆に言えば、だからこそ辞められたという点もあったのですが、当時はやはりみんなと少しずつ気持ちがすれ違ってしまい、ジレンマと戦いつつもプライドも邪魔してしまって、「辞めてまわせるならまわしてみればいい」という変な意地で辞めてしまったという部分も正直あります。直後は多少後悔もあったりしたのですが、どんどん変わっていく自分自身の体調と向かい合うので手一杯で。その後、つわりも、体調も少し落ち着いてきたんですが、辞めてしまった以上は、もう仕方ないですし、ほぼネイルに携わることなく出産を迎えました。

出産後の心境の変化は?

なるほど、では出産後もしばらくはネイルからは遠ざかっていたんでしょうか?

Aさん:そうですね。実は子供が幼稚園に入るまでは、完全にネイリストであったことも封印し、とにかくママ業メインであっという間の3年間でした。でも、子供が幼稚園にようやく入り、14時くらいまでの間ではありますが少し時間ができたことと、自分にも余裕ができたことでムクムクとやりたい気持ちが出てきて。久々にやると本当に楽しいものなんですよね。ネイリストになるスイッチは、やはり私の中の「ママ部分」と全然違うところにあるのですが、いったん世界に入ると没頭できますし、私にとってはやはり大事なものだなぁとそのときに思ったんです。

現在はどのようにされているんでしょうか?

Aさん:「独立した」と声高に宣伝するまでの規模感はないのですが、幼稚園のママ友をメインに、本当に短時間で安く子供を遊ばせながらできるようなネイルを週に2日ほどさせていただいています。ワンポイントネイルですが、本当にみなさん喜んでくれて。私がスイッチを入れられたように、ママたちにも、女性としてのスイッチをネイルを通して思い出してもらえたらいいなと思っているんです。正直、そこまでの金額では皆さん気軽に来られないし、毎日の主婦業ママ業をこなしてもOK!となるとデザインは限られるのですが、それでも、このネイルの腕を通して、ママたちとの輪はかなり広がり、同時に現在住んでいる地域情報も相当詳しくなりました。幼稚園のイベントでも、特別に呼んでいただけたりして、知名度も高くなってきたんです。

それは広がりそうですね!

Aさん:そうなんです。独立しようと思って独立したらこんなにうまくはいかなかったと思います。たまたま子供が幼稚園に通った地域で、最初2~3人のママ友にやってあげたことからここまで来てしまった感じなので。でも結果的に、自然口コミができ、コミュニティで勝手に告知してもらえて、同時に私自身もママの気持ちが分かるからこそできるサービスを提供できることがとにかく一番です。
あの現役バリバリ時代の年収や目指していたものとはかけ離れていますが、今、こうやってライフステージを進んできた結果、この腕を持っていて良かったと心から思いますし、私の新しいワークスタイルを確立したいなとも考えているんです。
これからさらに子供が大きくなり、もしかしたら2番目3番目と生まれてくる子もいるかもしれませんが、私なりのネイリストキャリアをつないでいきたいなと考えています。

出産までしている先輩のお話、いかがでしたでしょうか?
お話をお伺いしながら、「実はお迎えの時間までに作っておきたいネイルチップがある」と黙々と作業をこなしていたAさん。無駄にできない一人時間の使い方はもちろん、こんなビジョンで次を見据えてネイルに携わっている日々の生活はとても素敵でした。真似はできなくとも、考え方のヒントにはなるかもしれませんね。

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